怪談「にぃ～っ」

これは私が小学生だったころの90年代半ばくらいのころの話です。

私の家は当時米をつくっている兼業農家で、収穫の後の山が紅葉する時期に車で家族旅行に行くのが恒例でした。私も小学生ながら農作業を手伝っていました。

そんな秋の終わりごろのことです。昼間は観光を楽しみ、宿泊先の山の中にあるペンションに向かいました。コテージのような造りで温かみがあって非常に好印象な宿でした。

宿に着いてお風呂に入り、夕飯までの時間をベッドで横になって過ごしていました。なんとなく横に視線をやると、肩にとどくくらいの長さの縦長の輪郭の女の生首がありました。そして、ゆっくりと口角をにぃ～っと吊り上げて消えてしまいました。

あれが何だったのかわかりませんが、その後は何事もありませんでした。